和紙について
和紙とは、明治初期に洋紙に対して生まれた言葉で、日本で発達した独特の紙の総称です。
手漉きの和紙は、原料の栽培に始まり、何十という地道な工程を経て、1枚の紙ができあがります。完成まで、どの工程も決して楽な作業ではありませんが、日本の伝統や文化にも触れられる、魅力的で可能性に溢れた伝統産業です。大昔より受け継がれてきた、人にも地球にも配慮された持続可能な天然素材です。
本来は、楮(コウゾ)・三椏(ミツマタ)・雁皮(ガンピ)など、靭皮繊維およびその故紙を主原料として手漉きし、トロロアオイの根やノリウツギの内皮などから抽出した粘剤(ネリ)を紙料に混和して流し漉きします。
和紙とは、狭義では手漉き紙のことですが、明治後期から木材パルプやマニラ麻などを主原料とする機械漉きの擬和紙作りが始まり、近代化と共に発展したため、広義には機械漉き紙も含まれています。
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和紙が丈夫な理由
この画像は、繊維の長さを比較するため、コピー紙(左上)・機械漉き和紙(右上)・パルプ入りの手漉き和紙(左下)・楮100%の手漉き和紙(右下)をそれぞれ破いたものです。ご覧の通り、楮100%の手漉き和紙の繊維が圧倒的に長いことが分かります。
紙は、繊維が絡み合うことで強靭になります。繊維が絡み合うほど粘り強く、揉んでも破れない和紙となります。丈夫さの所以がここにあります。
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和紙の歴史
古くは中国に学び、近くは西欧の量産方式の影響を強く受けてきました。和紙という言葉自体は近代に生まれたものですが、その歴史はあまりにも古く、飛鳥時代まで遡ります。
- 610年:日本書紀に高句麗から来た僧の曇徴が絵具・紙・墨・碾磑(テンガイ…水力で回して粉をひく石臼)などを作ると記載されており、日本での製紙の最初の記録となる
- 1874年:日本で初めての機械漉き洋紙を製造
- 1894年:日本で初めての機械漉き和紙を製造
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製造工程
※トロロアオイ…アオイ科の植物。根から取れる粘液には、沈んで固まりやすい紙料の繊維を均等に分散させ、浮かばせるはたらきがあります。